My Sweet Highness
第2話 |
どこだ、ここは・・・? 確か、ターミナルに来ていたような――。 しまった―――!! 寝過ごしてしまった! 顔色を変えて驚く。 しかも、声をかけてくれたのは、何とあの戦闘機の整備士じゃないか!
「いや、ありがとう。何でもない。失礼するよ。」 そそくさと、ターミナルを立ち去る。 しまった、奴を見失ったか?と心配したが、ターミナルを出ると、例の亜麻色の髪が視界に入る。 よかった――。 見失ってはいないらしい。
そっと扉を開けて、中に入る。 いた! カウンターで何やら注文しているようだ。
目の前に金髪の少女が現れ、元気よく声をかけてくる。 おい!目立つじゃないか。他の人に声をかけてくれ! 「いや、ちょっと見たいだけだから・・・。気にしないでくれ。」 こそこそと店の隅に移動するが、少女が後をついてくる。 「お客さん、初めてですよねえ?探しものならお手伝いしますよぉー。」 頼むから、ほっといてくれ! 「いや、本当に結構だから・・・。」 ファルツがそう言って、再び店の中に目を配ると、ファムランは既にいなくなっていた。 (いない!!) 「あっ、お客さーん!」 袖を引っ張る少女を無視し、何とか店の外へ飛び出した。 後をつけて、しばらくすると、彼はラバナスタ・アカデミーの門をくぐって行く。 本館に入ると、階段を上り、書庫に向かっていった。 慣れた感じで書司官に挨拶をすると、閉架書庫に入っていく。
カウンター越しに、書司官に声をかけた。 「ファルツ公!珍しいですね。どうしたんですか?」 慌てて、人差し指を口にあて、静かにするよう合図をする。 「あの男は、しょっちゅうここに来ているのか?」 「ああ、ファムランさんですか?ええ、大体この時間にはいつもお見えになりますよ。本当に勉強熱心な方ですね。」 私は、軽く咳払いをして、小声で書司官に耳打ちした。 「何やら、国家の機密を探っている可能性もあるので、悪いが閲覧記録を見せてもらえないか?」 「そうなんですか?とても、そうは見えませんけど・・・。」 書司官は、キーボードを叩き始めた。
媒体機の記録を見せてもらうと、『イヴァリース創世神話』『黄道十二宮の謎』『発掘研究報告書第二七七号』・・・・など、歴史書ばかりだ。
「特に、交易とか経済関連のデータを検索している様子はないだろうか?」 「うーん。全くないですね。」
それにしても、機工士のくせに、歴史書ばかり読むなんて、聞いたことがない。 「あ、アーシェ陛下!お疲れ様でございます。」 書庫の入り口に姿を現したのは、アーシェであった。
近くの時計を見ると、午後の三時二十分を指し示している。 「おい、私のことは決っっっして言わぬように!」 慌てて、カウンターの下に隠れた。
「はい。いつもの席に行かれていると思いますよ。」 「そう、ありがとう。」 アーシェは、そう言うと閉架書庫に入っていった。
あぶない、あぶない。 っていうか、何だ!? ‘今日も’とか‘いつもの’って? 「君、陛下は‘いつも’ここに来ているのか?」 「ええ、大抵は、この時間にお見えになられますが・・・。」
仕事が終わるとさっさと部屋に戻られると思っていたら、こんなところにお越しになっておったとは!
こっそりと、閉架書庫に入っていくと、二人を見つける。 何やら話をしているようだ。 棚の陰から、覗いていると、ふいにファムランが、陛下の首に手を伸ばすと、自分の顔を近づけた。
陛下に何をするーーー!!
あの男は、絶対に許すわけにはいかん!!! 怒りを静めるため、深呼吸をしていると、いつの間にか二人がいない。 慌てて、書庫を出ると、ファムランは陛下と別れて、出て行ってしまった。 奴が入っていったのは、砂海亭とかいう酒場であった。
しかし、陛下のためだ・・・。仕方があるまい。 恐るおそる店に入る。 ファムランは、何やらカウンターのマスターと話をしていたが、すぐに二階にあがっていった。 奴が上り終えたところで、私もゆっくりと階段をあがる。
背後から、低音の声が響く。
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