レムレースに近づくと、そこには古い型の飛空艇が浮かんでいた。
通信をかけ、こちらの身元を明かすと、案の定、ヴァンたちであった。
ほどなく、飛空艇は、リヴァイアサンに近づいてきた。
アーシェとバッシュは、ヴァンたちの飛空艇――ベイルージュ――に乗りうつるとブリッジで懐かしい面々と再会した。
(バルフレア・・・!)
やはり、ここにいたのか、と思いながら、アーシェは努めて平静を装い、皆に話しかけた。
「・・・残念ですが再会の喜びを語り合う時間はありません。」
後にバッシュが続いた。
「今、イヴァリース中に正体不明のモンスターが現れているのだが、どうやら空賊たちが謎の石を使い呼び出しているらしい。」
ヴァンは驚いた顔で言った。
「石って・・・‘聖石’!?まさか地上で幻獣を!?」
「レムレースや幻獣のことは捕らえた空賊から聞いたわ。あれだけの力を持つ力が広まったら・・・、いずれまた大きな戦乱が起こるかもしれない。」
「君たちは幻獣の扱いに長けているそうだな。帝国でも調査を進めているが、事態を収めるため協力を頼みたい。」
ヴァンは、胸をどん、と叩くと、胸をはった。
「協力するよ!お前も色々あって困ってるんだろ?」
その様子を見て、アーシェは苦笑した。
「・・・相変わらずね。“協力に感謝する”わ。」
パンネロは、仕方がないな、といった表情でヴァンに話しかけた。
「“お前”はダメだって言ったじゃない。――それに、ミディアや秘宝について地上で調べたかったんだし、私たちも助かったんだよ!」
「では一度地上まで来てくれないか。そこに‘協力者’もいる。」
ベイルージュとリヴァイアサンは、再びイヴァリースに向かった。
***
東ダルマスカ砂漠に着艦すると、そこにはラーサーがいた。
「ご無沙汰しています。」
「ラーサー!こんな所にいていいのかよ?」
「皆さんが来ると聞いて、いてもたってもいられなくて。」
再会に顔をほころばせるラーサーを見ると、アーシェは少し胸が痛くなった。
(どうして、私はああいう素直な顔ができないのだろう・・・。)
「それに今回の一件は思った以上に問題になろうとしています・・・。」
ラーサーは、現在アルケイディスで集められた情報をヴァンたちに説明し、翼のジャッジに対する対応を一任したいと申し出た。
「オレたち、そいつを捜してるんだ。任せておけよ!」
「私も一緒に戦うわ。」
アーシェが申し出ると、ヴァンが驚いた顔をした。
「アーシェ、わかってんのか?幻獣だぞ?今までのモンスターとは勝手が違うんだぜ?」
ヴァンは心配だと言わんばかりに、アーシェに声をかけた。
「私ひとり何もしないなんて、そんなことできません。私にも戦う覚悟はできています。」
きっぱりと答えるアーシェの後ろで、くくっ、とバルフレアが笑った。
「女王様は相変わらずだな。――いいだろう、ついてきな。」
「おい!バルフレア!」
何か言いたげなヴァンの頭を押さえると、バルフレアはアーシェに近づいて言った。
「ただし、オレの目が届くところにいろよ。その方が面倒が省ける。」
「わかりました。――ありがとう、バルフレア。」
笑みを浮かべ礼を言うアーシェに、バルフレアは、軽く口角を上げて応えた。
***
東ダルマスカ砂漠からギーザ高原にむかい、各地で得た様々な情報を集約していくと、『翼のジャッジ』は異形のヴィエラである‘ミディア’であろうと、一行は確信した。
更なる情報を収集するために、翼のジャッジが目撃されたというパラミナ大峡谷へ向かった。
大峡谷を進み、ナルビナ戦役による戦死者祈念碑に近づいた時、ついに彼らは、翼のジャッジに遭遇した。
「ここは私が!」
バッシュが皆の前に進むも、彼女の術の前に、とうとう膝をつく。
「・・・偽りのジャッジめ。戦いを煽った挙句、行き着いた先は帝国の犬か。貴様が裏切った死者たちの恨み――その身に受けるがいい!」
「違う!死者の恨みなど晴れない!確かに私は偽りのジャッジだ。――だからこそ成し得たことがある!生きている者の未来を作り上げることだ!翼のジャッジよ!幻影と知ってなお、去っていった者たちに縋ろうというのなら――その想い、私が断ち切ろう!」
翼のジャッジが繰り出す幻獣を何とか打ち破ったものの、気づいたときには、翼のジャッジ――ミディア――は消えていた。
しかし、一行は、ミディアの足跡を辿るうちに、彼女が抱える苦しみを感じ始めていた。
パンネロは悲しげに、呟いた。
「彼女はウィリスを亡くした戦争を恨んでいたのかな・・・。」
アーシェは、その言葉に胸がちくりと痛んだ。
「あの戦争を経験すれば、誰だってそうだわ。」
「力を得た彼女は、真っ先に復讐しようと思ったのでしょう。」
バッシュは、辛い表情を示すアーシェの様子を見ながら、一年前の戦いを思い起こした。
「けれど・・・、今はもう新しい時代。」
アーシェは、自分に言い聞かせるように言った。
「時代が変わっても人の心は変わらず残ります。」
不意に聞こえた声に、一行が振り返ると、ラーサーが立っていた。
「陛下!」
バッシュの脇を素通りし、ラーサーは墓碑の前に進み出た。
「・・・時間はかかるかもしれない。でも――。」
「ええ、成し遂げてみせます。共に手を取り合える世界を・・・。未来に――。」
女王と皇帝陛下が力強く頷きあう様子を、一行は見守っていた。
***
「心を奪うレムレースの神『フォルサノス』?」
グレバドス遺跡に向かう道すがら、アーシェは事の経緯をバルフレアから聞いていた。
バルフレアは、亡き父が遺した資料を手がかりに、グレバドスの秘宝を手に入れた。
しかし、秘宝を調べるうちに、石の質がイヴァリースの魔石と異なることに気づき、独自に調査を進め、聖晶石の存在をつきとめたのだ。
翼を持つ民族エグル族と地上の神オキューリアの戦争。
そして、戦火を免れるために、レムレースに逃れたエグル族が、再びイヴァリースに現れることがなかったのは、空に封印がなされ、閉じこめられていたから――。
オキューリアが天空に施した結界の力の源が聖晶石にあると考えたバルフレアは、聖晶石の破壊を図った。
その途中で、ヴァンたちと合流したのである。
「さっきも見ただろう?翼のジャッジ、すなわちミディアは、‘神’に心を奪われている。死んでしまった彼女の恋人――ウィリス――の想いが、ミディアの心を解放させるために、ヴァンたちをレムレースに呼び寄せた、ってわけだ。」
愛するものを奪われたとき、我々は、こうもたやすく‘力’や‘神’にすがってしまうのか・・・。
その姿は、かつてのアーシェを彷彿とさせた。
「しかし、ミディアは、もはやフォルサノスの掌の上、といった感じだ。彼女は、神の力にとりつかれてしまっている・・・。」
力にとりつかれた者――。
バルフレアもまた、かつての父親を思いだしていた。
「彼女は、聖晶石に集まった力を求め、イヴァリースへ復讐しようとしているんだろう。残る石は、あと一つだ・・・。」
「イヴァリースの神『オキューリア』は、大空の歴史も支配していたのね・・・。」
「ああ、毎度毎度『神様』ってヤツは、やっかいなものだ。」
***
グレバドス遺跡には、古い石碑があり、フォルサノスが妻と子供に残した遺産が‘グレバドスの秘宝’であることがわかった。
この秘宝を鍵に稼働するベイルージュは、フォルサノスが家族をレムレースに呼ぶための飛空艇(フネ)だったのだ。
「我々を導いたのは神の船だったのか・・・。」
石につきまとう悲劇への予感を、皆が感じ始めていた。
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